
飲食店を開業するには、調理や接客の準備だけでなく、行政への許認可申請や届出が欠かせません。「何をどの順番で手続きすればいいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。許認可や届出に漏れがあると、開業日が大幅に遅れたり、最悪の場合は営業停止になるリスクもあります。この記事では、飲食店開業時の許認可と届出の全体像を、初めての方にもわかりやすく整理してお伝えします。
飲食店開業に必要な許認可・届出は全部で5種類

飲食店の開業準備を進めるうえで、まず全体像を把握しておくことが大切です。必要な手続きは大きく5種類に分けられ、それぞれ申請先や取得のタイミングが異なります。以下で一つずつ確認しましょう。
①飲食店営業許可(保健所)
飲食店を営業するために、最も基本となる許可です。管轄の保健所に申請し、施設の構造や衛生設備が基準を満たしているかを審査・検査してもらいます。
この許可を取得しなければ、いかなる飲食の提供もできません。開店日から逆算して、少なくとも2〜3週間前には申請手続きを始めることが望ましいです。
営業許可には有効期限(おおむね5〜8年)があり、期限が来たら更新手続きが必要です。開業後も管理が続く手続きである点を覚えておきましょう。
②食品衛生責任者の設置
飲食店には、施設ごとに食品衛生責任者を1名以上置くことが法律で義務付けられています。責任者は食品の衛生管理を担う役割で、営業許可申請の際に設置が確認されます。
栄養士・調理師・製菓衛生師などの資格を持っている方はそのまま責任者になれます。資格がない場合でも、各都道府県の食品衛生協会が実施する約6時間の講習会を受講すれば資格を取得できます。費用は地域によって異なりますが、1万円前後が目安です。
③防火管理者の選任と関連届出(消防署)
収容人員が30人以上の飲食店では、防火管理者の選任と、消防署への「防火管理者選任届」の提出が必要です。また、消防用設備の設置状況を確認した「防火対象物使用開始届」も、営業開始の7日前までに提出しなければなりません。
防火管理者になるには、消防署や民間機関が主催する「甲種・乙種防火管理講習」の修了が必要です。座席数の少い小規模店舗でも、建物全体の収容人員が30人を超えるケースがあるため、物件選びの段階で管轄消防署に確認しておくと安心です。
④開業届・青色申告承認申請書(税務署)
個人事業主として飲食店を開業する場合、開業から1ヶ月以内に税務署へ「個人事業の開業届出書」を提出する義務があります。法人の場合は法人設立届出書の提出が必要です。
同時に、節税メリットのある「青色申告承認申請書」も提出しておくことをおすすめします。青色申告を選択すると、最大65万円の特別控除を受けられます。申請書の提出期限は、開業日から2ヶ月以内(その年の1月15日以前に開業した場合は3月15日まで)です。税務署の窓口のほか、e-Taxでのオンライン提出も可能です。
⑤業態によって必要な追加許可・届出
提供するメニューや営業スタイルによっては、上記4種類に加えてさらに許可や届出が必要になる場合があります。
代表的なものを以下にまとめました。
| 業態・提供内容 | 必要な許可・届出 | 申請先 |
|---|---|---|
| 深夜0時以降に酒類を提供 | 深夜酒類提供飲食店営業開始届 | 警察署 |
| パン・菓子の製造・販売 | 菓子製造業許可 | 保健所 |
| 客に接待行為を行う | 風俗営業許可 | 警察署 |
| 旅館・ホテル内での飲食提供 | 旅館業許可(既取得の場合は不要な場合も) | 保健所 |
自分の業態が何に該当するか迷ったときは、早めに保健所や警察署の担当窓口に相談するのが確実です。
飲食店営業許可が一番重要な理由

5種類の手続きの中でも、飲食店営業許可は特に重要です。これがなければ一切の営業ができず、違反した場合のペナルティも重いため、他の届出より優先して取り組む必要があります。
許可なしで営業すると営業停止・罰則のリスクがある
飲食店営業許可は、食品衛生法に基づく法定の許可です。許可を取得せずに営業した場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科される可能性があります(食品衛生法第82条)。
「まだ許可が届いていないけど、試験営業として少しだけ…」という気持ちはわかりますが、そのような状態での営業も違法となります。許可書を受け取り、有効期間の開始日以降になって初めて、正式に営業できます。
保健所からの立入検査で無許可営業が発覚した事例は全国で報告されており、SNSで情報が広まるとお店の信頼にも大きく影響します。リスクを避けるためにも、許可取得を最優先に進めましょう。
許可取得には施設基準を満たす必要がある
飲食店営業許可を受けるには、店舗の設備が保健所の定める施設基準を満たしていなければなりません。主なチェックポイントは以下の通りです。
- 食品の取り扱い区域と客席が区分されていること
- 手洗い専用の洗面設備が設置されていること
- 2槽以上のシンクが確保されていること(業態による)
- 冷蔵・冷凍設備が適切に設置されていること
- 換気設備(換気扇・グリストラップ等)が整備されていること
内装工事後に「基準を満たしていない」と判明すると、改修費用が追加でかかり、開業日が大幅にずれてしまいます。工事着手前に保健所へ図面を持参して事前確認を行うことで、こうした事態を防げます。
飲食店営業許可を取得する手順(保健所への申請の流れ)

飲食店営業許可の取得は、4つのステップで進みます。各ステップでやるべきことを押さえておくと、スムーズに手続きを進められます。
ステップ1:保健所へ事前相談する
申請書を提出する前に、管轄の保健所へ事前相談に出向くことを強くおすすめします。この段階では、店舗の平面図や内装のレイアウト案を持参すると、施設基準に合っているかどうか具体的な助言がもらえます。
「どんな設備が必要か」「シンクの数や配置はこれでいいか」といった疑問をこの段階で解消しておくと、後の検査で引っかかるリスクをぐっと減らせます。保健所への事前相談は無料で行えるため、物件契約前後のなるべく早い時期に訪問しましょう。
ステップ2:営業許可申請書を提出する
内装工事が完了または完了見込みになったら、必要書類を揃えて保健所の窓口に申請書を提出します。主な必要書類は以下の通りです。
- 営業許可申請書
- 食品衛生責任者の資格を証明する書類(資格証・修了証など)
- 店舗の平面図
- 水質検査成績書(井戸水を使用する場合)
申請時には手数料(業態や地域によって異なりますが、概ね1〜2万円程度)の支払いも必要です。申請が受理されると、施設検査の日程が決まります。
ステップ3:施設検査を受ける
申請受理後、保健所の食品衛生監視員が店舗に来て施設検査を行います。検査では、申請書類の内容と実際の設備が一致しているか、衛生基準を満たしているかを確認されます。
検査当日は食品衛生責任者(または代理の責任者を知っている方)が立ち会えるようにしておきましょう。指摘事項があった場合は改善後に再検査となるため、指摘を受けないよう事前に保健所の確認ポイントをリストアップして自主チェックしておくと安心です。検査は通常、申請から1週間程度で実施されます。
ステップ4:営業許可書を受け取り営業開始
施設検査に問題がなければ、数日以内に営業許可書が交付されます。許可書には有効期間の開始日が記載されており、その日以降から正式に営業できます。
全体の流れをまとめると、事前相談 → 申請書提出 → 施設検査 → 許可書交付となります。申請書の提出から許可書の受け取りまでは、おおむね2週間を見込んでおきましょう。
許可書はお店に掲示することが望ましく、更新時期(有効期限の満了前)には更新申請を忘れずに行う必要があります。
業態別|追加で必要になる許可・届出一覧

飲食店営業許可を取得したうえで、提供するサービスの内容によっては、さらに別の許可や届出が必要になります。自分の業態に該当するものがないか、以下で確認してみてください。
深夜0時以降にお酒を提供する場合(警察署)
バーや居酒屋など、深夜0時以降もお酒を提供する飲食店は、深夜酒類提供飲食店営業開始届を管轄の警察署に届け出る必要があります。これは風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)に基づく届出です。
届出は営業開始の10日前までに行うことが定められています。また、住居専用地域など一部の用途地域では深夜酒類提供飲食店の営業が禁止されているため、物件選びの段階で用途地域を確認しておくことが大切です。
パンや菓子を製造・販売する場合(保健所)
カフェやレストランでオリジナルのパン・ケーキ・焼き菓子などを店内で製造して販売する場合、飲食店営業許可とは別に菓子製造業許可の取得が必要です。
製造専用の作業スペースや、専用の手洗い設備・シンクが設けられているかなど、通常の飲食店とは異なる施設基準が設けられています。内装工事の設計段階から保健所に相談し、両方の基準を同時に満たせるレイアウトを検討しておくとスムーズです。
風俗営業に該当する接待を行う場合(警察署)
「接待」とは、特定の客に対してホステスやホストが個別につき、歌やゲームで遊んだり会話の相手をしたりする行為を指します。こうした接待を行う場合は、風俗営業許可の取得が必要です。
許可の申請は管轄警察署を通じて行い、審査には約2ヶ月かかることが多いです。用途地域によっては許可が下りない場所もあるため、物件選定の段階から警察署や専門の行政書士に相談することをおすすめします。単に「仲良く話す」程度のサービスでも接待に該当するケースがあるため、曖昧な場合は必ず確認しましょう。
許認可・届出で失敗しないための3つのポイント

手続きの種類と流れを把握したうえで、実際に開業準備を進める際に意識してほしいポイントが3つあります。これらを念頭に置くだけで、許認可・届出に関するトラブルの多くは未然に防げます。
物件契約前に保健所へ相談する
「物件を契約してから保健所に相談したら、施設基準を満たせない構造だった」というケースは珍しくありません。特に中古の居抜き物件は、前の業態の設備がそのまま残っているため、新たな業態に必要な設備と合わない場合があります。
物件を決定する前に、候補物件の図面を持参して保健所へ相談するのが理想的です。「この物件で〇〇の業態を始めたい」と具体的に伝えると、必要な改修点を教えてもらえます。契約後の改修費用や工期の追加を避けるためにも、この順番を守ることが重要です。
申請から許可取得まで2週間程度かかることを見込む
営業許可の申請から許可書の受け取りまで、通常10〜14日程度かかります。内装工事の完了直後に申請しても、許可が下りるまでの間は営業を始められません。
開業日から逆算して、余裕を持ったスケジュールを組むことが大切です。たとえば「〇月〇日にオープンしたい」と決めているなら、その2〜3週間前には申請書を提出できるよう、工事完了のタイミングを調整しましょう。
さらに、施設検査で指摘を受けた場合は改修と再検査が必要になるため、実際にはもう少し余裕を持ったスケジュールが安心です。
迷ったら行政書士に依頼する
許認可や届出の手続きが複数重なると、書類の準備や窓口とのやり取りだけでもかなりの時間と労力がかかります。特に、風俗営業許可や深夜酒類提供飲食店営業開始届など、警察署への申請が絡む場合は手続きが複雑です。
こうした場合は、行政書士への依頼を検討してみてください。書類作成から申請代行まで任せられるため、開業準備の他の作業に集中できます。費用は手続きの種類によって異なりますが、飲食店営業許可の申請代行であれば5〜10万円程度が相場です。手続きの漏れや遅延によるリスクを考えると、専門家のサポートを活用する価値は十分あります。
まとめ

飲食店開業時の許認可と届出は、大きく5種類(飲食店営業許可・食品衛生責任者の設置・防火管理者の選任・開業届の提出・業態別の追加許可)に整理できます。
中でも飲食店営業許可は最優先で取り組むべき手続きで、申請から取得まで2週間程度かかることを念頭にスケジュールを組むことが大切です。物件契約前に保健所へ相談し、施設基準を事前に確認しておくことで、工事後の無駄な改修を防げます。
「何から手をつければいいかわからない」という方は、まず管轄の保健所に連絡することから始めてみてください。一つひとつ丁寧に進めていけば、許認可・届出の手続きは必ず完了できます。
飲食店開業時の許認可と届出についてよくある質問

-
飲食店の開業に必要な許可は何ですか?
- 最も基本となるのは、保健所が発行する飲食店営業許可です。これに加え、食品衛生責任者の設置、消防署への届出(規模による)、税務署への開業届が主な手続きです。業態によっては深夜酒類提供飲食店営業開始届や菓子製造業許可などが追加で必要になる場合があります。
-
飲食店営業許可の申請から取得まで、どれくらいかかりますか?
- 申請書の提出から許可書の受け取りまで、おおむね10〜14日程度かかります。施設検査で指摘事項があった場合は改修・再検査が必要となり、さらに日数がかかる場合があります。開業日から逆算して、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
-
食品衛生責任者の資格がない場合、どうすればいいですか?
- 資格がなくても、各都道府県の食品衛生協会が主催する約6時間の講習会を受講すれば、食品衛生責任者の資格を取得できます。費用は地域によって異なりますが、1万円前後が目安です。調理師・栄養士などの資格保持者は講習なしで責任者になれます。
-
居抜き物件でも飲食店営業許可の再申請は必要ですか?
- はい、営業許可は店舗ごと・事業者ごとに発行されるため、前のオーナーが許可を持っていても引き継ぐことはできません。物件を取得したら、新たに申請が必要です。居抜き物件でも設備が変わっていない場合は手続きがスムーズなこともありますが、保健所への事前確認は必須です。
-
行政書士に依頼するメリットは何ですか?
- 書類作成や窓口とのやり取りを代行してもらえるため、開業準備の他の作業(採用・メニュー開発・集客など)に時間を使えます。また、手続きの漏れや申請ミスを防ぐことができ、開業遅延のリスクを減らせます。複数の許可が必要な業態や、警察署への申請が絡む場合は特に心強いサポートになります。
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